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あいすまん

あいすまん

ライブレポ

ライブレポ


99.5.30
PARODY(那覇市)

~鬼×(キバツ)・安田辰也・やとわれ救世主・灰夢鈴(ぐれむりん)~


 正直言って、あまり行く気はしなかった。救いを求めて行ったライブだった。那覇市安里のライブハウスPARODYでの、やとわれ救世主のライブ。はっきり言ってこれまで見てきた高校生のコピーバンドの演奏にうんざりしていた私は、初めて見るやとわれ救世主に「高校生とはレベルが違うはずだ」と期待と多少の不安を抱きながら「ジュース一杯500円かよふざけんなぼったくりだ」などと思いつつPARODYへと入ったのであった。
 「座らないで下さい暴れないで下さい殺される恐れがあります責任は一切負いません」などと白いスプレーで書かれた黒い幕の下がる演奏開始前のステージ。鬼×(キバツ)というバンドのデモンストレーションであった。「こんなやられたら期待するだろ」と言いつつ膨らむ不安。しかし演奏が始まるとそんな心配してた自分は犯罪だったことに気付く。いきなり客席の真ん中でギターがかき鳴らされて始まったCoccoの「首」。死装束をまとい頭は包帯でぐるぐる巻きの、まるでリングの貞子さながらのボーカルが絶叫する。ギターはとびはねボーカルはヨタヨタと客席をさまよい歩き客の顔をなで絶叫しもだえる演出過剰なまでの切れぶり。こんな怪奇現象のような恐ろしい観せ方をするバンドを初めて見た私は全身鳥肌が立ち、泣きそうになりながらビデオカメラを持ち込まなかったことを後悔した。
 次にエンターテイナー安田辰也の登場。「一人で何ができるんだ」と思った私は甘かった。コンポから流れる中国っぽい曲にあわせて大道芸のように踊ったり跳ね回ったり客とお手玉したり、かと思えば恐ろしく高い歌声も披露。一人でエンターテイメントを成り立たせている安田辰也は、一体何なのかよくわからないがかなりすごいのではないか。見てて面白いし。
 そしてお待ちかねやとわれ救世主。ドギャギャーンというギターの音とともに自己紹介的なシャウトから始まり、恐ろしくノリの良いハードロックの空気が聴衆の心搏数を上げる。客は総立ちで頭を振り始め暴れだす。かといってハード一辺倒でもなく「俺達しょせんはのら犬3びき」というMCから滑らかに曲へとつながる「のら犬の詩」や、ミドルテンポの「解決キッド」などもあり、空気を一度ほんわかさせたあと最後はやっぱりノリノリのロックンロール。頭を振り乱し力の限り歌い、ギターソロは反り返って弾いたりと、サービス精神旺盛のライブパフォーマンスは聴く者を見る者を完璧にやとわれ救世主の空気の中へと引き込んでしまう。個人的にはカッティングが完璧にキマッたところで涙が出た。7曲もオリジナルが聴けて良かった。
 最後は「超絶ビジュアルバンド」(自称)灰夢鈴-ぐれむりん-。見た目はビジュアルっぽかったけど演ってる曲はハードコアっぽかったのはご愛敬。ノリも良くて観せてくれたからよし。ボーカルの挙動やライブパフォーマンスは確かにビジュアル系の方向での格好良さがあった。このバンドも高校生とは思えないぐらい魅せてくれた。
 全体的に最初から最後まで楽しめるライブだった。今まで1000円払って高校生のライブばっかり行ってて、「ライブって面白くない」とか思い始めてた矢先、このライブで私は救われた。初めて元が取れたと思った。いや、こんなライブが見れて1000円だったら安すぎ!ぐらいの勢い。トチッてやり直すバンドとか社会人が会社帰りに日頃のストレス発散しにきてるバンドとかもちろん論外で、この日のバンド及び安田は聴かせることノセることは最低限で、それ以上に観せる、楽しませるというエンターテイメントの部分まで意識している紛れもなくレベルの高いバンドなんだと思った。観て聴いて楽しくなって感動して、やる気もでる。こんなプラスのエネルギーがもらえるライブに、もっと行きたい。
  1999 『Amp!』Vol.1(沖縄国際大学文芸同好会)





牙 
 8.15 PARODY

 前回ブレイクアウト祭で初めて観た牙。やたらケンカ腰のボーカルと演奏せずにひたすら奇妙な動きを続けるキーボードに一人だけマトモなギター、の三人。音がヘビーで曲はカッコイイのにキャラがひたすらバカなバンドとして今回期待して見にいったのであるが、いきなりキていた。
 キーボードの人が国旗に敬礼し、デジロック君が代が鳴り響く中、野球のユニフォームでギターが登場「甲子園から来たぜー!」。の後、「キーナ!キーナ!」のキナコールの中、ボーカル喜納さんがハーモニカを吹き鳴らしながら登場。そしていきなり「南無妙法蓮華経ー!」の絶叫がこだましてハーモニカのうるさい『公明党(創価学会)に捧ぐ歌』。ブレイクアウトではあまりのヤバさにカットされていた。ちなみにMCでの「ビジュアル系が来なかったからって来ない奴はみんな死んでしまえ!」という心の叫びもカットされていた。本日8月15日を敗戦記念日だと宣言し、国旗に敬礼して閉会した国会に対し「バッカじゃねーの!」と絶叫しつつシャツを脱いだら乳首にガムテープが貼ってあり、ジュースをぶちまけ客に水を吹き掛け、ステージから飛び出して所狭しと走り回るとボーカルのジーンズがズリ下がってブリーフが見えるというありさま。絶叫「牙を剥け!」。果てはキーボードの風俗レポートVol. 36(内容は伏せざるを得ません)や、ボーカルの初体験ネタをクイズにしたりと、暴走するナンセンスMC「ビデオ撮ってる人、俺たちを記録に残すな!」。ライブ告知では「D-SETでエスパー伊藤と演るけどお前ら来んじゃねーボケ!」と叫ぶ始末。
 突き抜けたバカっぷりがカッコイイ牙。フライングドラッグ2にもお呼びがかかり近頃脚光を浴びつつあるが、最近首里のコンビニに喜納さんが夜中軽自動車で買い物に来ていたのを目撃したんであり、何だか恐くて声はかけられなかったんであるが、軽に乗っているあたりやっぱりまだインディーズなんだなあでもライブハウスの外では暴れたりはしないんだろうなあ、などと思ったんである。しかしたまには曲をまともに聴いてみたい。音源出てないのかなあ。






鬼× (キバツ) 
 99.8.15 PARODY


 鬼×の観せ方は尋常じゃない。ビジュアル系お得意の絶望とか、狂気とか、そんなレベルじゃない。観せ方へのこだわりはもう、執念?プロ意識みたいなもの?いや、アレだ。怨念!リングの貞子より恐い。
 というのも、いつもの「座らないで下さい暴れないで下さい殺される恐れがあります頭がおかしくなっても積任は負いません」の幕を引き裂いて登場したボーカルの女性は、着物を半分脱いでおり、上半身裸で絶叫するのであって、おしろいの塗られた真っ白な胸もあらわに顔には何やら恐ろしげな被り物、長い黒髪を振り乱して叫ぶ様に、「そこまでするか?」って引くこともできたが、逆に惹かれたのであり、まさにマリリンマンソン級の切れぶりであってインディーズにここまでぶっ飛んだライブパフォーマンスを見せるバンドがいるとは、もはやただ驚くばかりである。いや、インディーズだからいるのか?
 『バラバラ』一定のテンポで延々と刻まれるドラムの音にヒズみまくりのノイジーなギターが重なる。奇妙にゆがんだ空間の中を、ボーカルの脈絡のない絶叫が突き抜けて鬼×の空気ができあがる。ベースの重低音が響く停滞した空間の中を、「もっとバラバラにしてよ」と、聴く人の鼓膜を破る勢いの叫びが疾走する。
 鬼×の恐さを演出しているのは、観せ方もそうだが一番はボーカルの叫びだと思う。男が叫ぶと、よほど気を付けて声を出さないとシャウトにならないのであり、ただがなっているだけになり聞き苦しいこと極まりないのであるが、女の絶叫や悲鳴はどんな叫び方でも大概美的要素を伴ってくるのであって、不思議であるが私はそのことにCoccoの「裸体」を聴いて気付いたのである。叫びには美があるのであり、それは聴く者の思考を問答無用で寸断し、トリップさせる作用をもつ。
 だから、鬼×は例えるならドラッグであると思う。狂気に身を委ねる快感を味わうことができる。インパクトの強さはマトモじゃない。トビ方も中毒性もかなりのハイクオリティだ。これで合法?ってぐらい効くのであって、ある意味狂暴なバンドであり、危険。                                           








99/10/31
PARODY
 
鬼×  -キバツ-  


    
 「誰がバラバラにしたのよ 元の私を返して頂戴」-『バラバラ』-轟音と絶叫の中、初めてはっきりと歌詞が聴き取れた瞬間、背筋が凍った。
 ハロウィンの夜、演奏開始前のステージには、ベースの蛇女さんのみが立っている。ドラムセットには黒い大きな布がかぶせてあり、ギターのイッセイさんもベースの「ヒトラー」も、そしてボーカルもいない。しかし打ち込みの音が流れ、演奏が始まる。するとステージ中央の布の中から手が!マイクを手探り、地面に爪を立て、ゆっくりと這いずり出てくるボーカル。マイクは客席前列にある。がたん、とステージから落ち、なおも地を這うボーカル。客席まで手を延ばす。その瞬間、前列に座っていた聴衆がまるでお菓子にたかる蟻の群れに足を踏み込んだときのように、一斉に逃げ、客席に穴が開く。その場所でボーカルはよろよろと立ち上がり、歌い始める。叫び始める。ヨタヨタ歩いたり、ゆらゆら回ったりしながら。
 鬼×は視覚に強烈に訴えかける。しかし音的にも強烈である。目立つバスドラムの音(打ち込み)と、ベースの存在感の大きい、重く暗く激しい音。そしてボーカルの叫び。視覚への訴え掛けは効果的に雰囲気を演出することに成功しているが、鬼×のいちばんの魅力は叫びにあると思う。デモテープが出ていた。怨念が凝縮されたようなすさまじい力を感じる良いテープであると思うが、やっぱり鬼×の良さ、恐さはライブで演奏とその観せ方を見てブチ切れまくりの叫びを聴いたほうが充分に体感できると思う。叫びで酔わせてくれる。しかしこのテープで演奏や歌詞がはっきりと聞き取れた時にも、また新たな鬼×の魅力を知ることができる。私はライブを録音したテープとデモテープの二つを持っているので、聴き分けるとおもしろい。
 胸を出しているとか、手首が血塗れとか視覚的な要素はわかりやすい。それに歌詞による物語性と重く激しい音、そして絶叫が加わって完璧な恐怖が演出されるんだと思う。
 デモテープは御霊前と書かれた香典袋に入っていた。300円。中には真っ黒な呪いのテープ。「呪」の血文字。入っていた紙は歌詞カードかと思ったら「死ね死ね死ね死ねシネ死ね死ねしね死ね死ね」とビッシリ呪いの文字で埋め尽くされている。さらに香典袋の中でカラカラ音がする。のぞくと釘が入っていた。怨念。


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